放射線技師とは?進学サイトには書かれない、元技師ひとりの話

診療放射線技師を目指すか迷っている人へ。進学サイトや求人サイトに書かれている「放射線技師とは」と、元・診療放射線技師の筆者が働いて知った実際の仕事のちがいを書きます。やりがい、責任、全国どこでも働けるか、給料まで。

調べるほど、よくわからなくなる仕事

「放射線技師とは」で検索すると、進学サイトや求人サイトがたくさん出てきます。

レントゲンやCTを撮る仕事。 病気の早期発見に役立てる、やりがいのある仕事。 資格があれば、全国どこでも働ける。

だいたい、こんなことが書いてあります。

私は学生のころ、これを読んで放射線技師になりました。 そして働いてみて、その多くが的外れだったと知りました。

この記事では、元・診療放射線技師の私が、ネットの説明と、実際の仕事のちがいを書きます。 目指すのをやめてほしいわけではありません。 ネットの像ではなく、本当の仕事を見たうえで決めてほしいだけです。

先に断っておきます。 これは、一人の技師の、偏った話です。 私が現場にいたのは2年ほどで、そのあとエンジニアになりました。 勤めた病院も、出会った患者さんも、限られています。 長く勤めた先の話は、肌感では書けないので「わからない」と書きます。

そのかわり、どのサイトにも書いてある、ありふれた説明はしません。 私が高校生のころに読みたかった、一人の技師の深い話を書きます。

夜、スマホで放射線技師を調べる高校生。画面のまわりには、きらきらした理想の技師像が浮かんでいて、本人は首をかしげている

仕事の中身:決められた通りに撮る

ネットの説明では、仕事は「レントゲン・CT・MRI・マンモグラフィなどの撮影」。 これは、だいたい合っています。 現場では、いわゆるレントゲンのことを「一般撮影」と呼びます。

ただ、中身は想像とちがうと思います。

撮り方は、だいたい決まっています。 どの向きで、どの位置に体を置いて、どの条件で撮るか。 医師の指示を受けて、決められた通りに撮って、画像を出す。 これが毎日の仕事です。

いちばん大きい仕事は「決められた通りに撮れない人」

では、何が大変か。 決められた通りに撮れない人を、どう撮るかです。

  • 腰が曲がっていて、あおむけに寝られない人
  • そもそも立てない人
  • 体の形が、ほかの人とちがう人
  • 検査を嫌がって、暴れてしまう人

決められた姿勢がとれない人を、なんとか撮れる形にする。 体を支えたり、持ち上げたり、押さえたりします。 放射線技師は「肉体労働」と言われることがありますが、たぶん、ここのことです。

腰が曲がって寝られない高齢の患者さんを、技師が支えながら撮影の位置に合わせている

私の勤め先では、暴れてしまう人がいちばん大変でした。 (これは、私の勤め先ならではの、まれな場面です。多くの技師は、そう出会いません)

MRIはまず撮れません。それでも、どうしても撮りたいと言われることがあります。 一般撮影やCTなら、押さえている自分も必ず被ばくします。 正直に書くと、 「なんで私が、検査を望んでもいない人のために、被ばくしないといけないんだろう」 と思ったことがあります。 きれいな話ではありませんが、そう思う場面もある仕事です。

逆に、健診の施設では、こういう場面にはほとんど出会わないと思います。 骨折の人はいても、基本はいつもと同じことの繰り返し。 現場の裏で、技師が「スイッチマン」と呼ばれることがあるのは、このためだと思います。

でも、裏を返せば、技師の腕が出るのは、決められた通りにいかない時です。 立てない人を、どう支えれば決まった写真になるか。 体の形がちがう人を、どの角度から撮れば医師が見たいものが写るか。 そういう患者さんが来る病院なら、ここを工夫するのが好きな人には、毎日いつもと同じ仕事ではありません。

大きな病院では、話がまるで変わる

ここまでは、私が見た範囲の話です。 大きな病院に勤めた友人からは、まったくちがう話を聞きました。

大きな病院では、年単位でいろいろな検査や装置を任されていくそうです。 病院によっては、5年くらいかけて、ようやく全部を回り終えるほどだと。

それに、IVR(カテーテルを使った検査や治療)や手術に入る技師は、撮影とはまた別の技術が要ります。

これだけやることの幅が広いと、飽きることはあまりないのかもしれません。 学ぶことも、ずっと多いはずです。

大きな病院の廊下。ガラス越しにCT・MRI・血管撮影・手術室が並び、若い技師が見渡している 「いつもと同じことの繰り返し」になるか、「何年たっても学ぶことがある」になるか。 それも、病院で決まります。

やりがい:「早期発見に役立つ」は、本当か

ネットの説明では、やりがいは「病気の早期発見や治療に役立ったと感じられること」。

これは、あります。ただ、いつもではありません。

私にも、早期発見に役立てたことがあります。 先生の読影の補助をして、そのときは誇りを感じました。

でも、ふだんの仕事はちがいます。 診断をするのは医師です。 技師は、決められた通りに撮って、画像を出すまで。 その人がどんな病気だったかは、医師から教えてもらえるわけではありません。 知るのは、自分から聞きに行ったときだけです。

「読影の補助」は、画像を見て、気になるところを医師に伝える仕事です。 これができるかは、施設と先生しだいです。 先生に読影の結果を教わったり、気づいたことを伝えたりできる所もあれば、できない所もあります。 医師が必要としていなければ、いつも通りに撮って出すだけです。

スイッチマンと言われないように、読影の補助などいろいろなことに手を出す技師もいます。 でも、それで給料が上がることは、多くありません。 「やっぱり気胸だったよ」と、趣味のように確かめている人が多い印象です。

だから、やりがいを感じるかは、人によると思います。

ただ、画像を見るのが好きな人は、自分からいくらでも深められる仕事です。 撮った画像に何が写っていたかを、あとから自分で確かめる。 それが給料に表れなくても、趣味のように続けている技師は多いです。

そして、仕事は安定しています。

責任:「治療方針を左右する」は、どの技師の話か

ネットの説明では、「患者の治療方針を左右する、責任の重い仕事」。

たしかに、放射線治療の仕事は責任が重いです。 治療の計画に沿って装置の設定を扱いますし、当てる線量は撮影の何百倍以上にもなります。

ただ、放射線治療の仕事ができる技師は、ほんの一部です。 治療の装置がある病院でなければ、その仕事はありません。 放射線技師は、勤め先の規模や装置で、仕事の中身が決まる職種です。 そして治療でも、ほとんどは決められた通りに進めます。

「全国どこでも働ける」の、本当の意味

ネットの説明では、「一度資格を取れば、全国どこでも働ける」。

働けるのは本当です。 でも、どこでも同じように働けるわけではありません。

技師になってからも、CTや放射線治療などの「認定資格」があります。 その多くは、その分野で何年働いたか、何件やったかが受験の条件です。 勤め先にその装置や検査がなければ、条件を満たせません。

私も、取りたかった資格の条件を、勤め先では満たせませんでした。 資格がないと、たとえば放射線治療をしている病院に移りたくても、移りにくい。 資格は全国で通じても、できることは勤め先しだいです。

逆に言えば、勤め先を選べば、やりたいことに近づけます。 治療をやりたいなら治療の装置がある病院へ。CTを極めたいならCTの件数が多い病院へ。 就職のときに、それを知っているかどうかで、その後が大きく変わります。

就職先:メーカーや研究は、誰の話か

ネットの説明では、「就職先はほとんど病院。ほかに健診・メーカー・研究もある」。

一応、あります。 でも、メーカーや研究に行けるのは、ほとんどがしっかりした大学を出た人です。 しかも、そこでは放射線技師の国家資格は使いません。

給料:「年収500万円」は、私の肌感にはない

求人サイトの例では、月給17万〜29万円ほど。 これは、だいたい合っていると思います。

ただ、「平均年収500万円」のように書かれているのは、私の肌感にはありません。 私の最初の手取りは、夜勤などを除いて16万円ちょっとでした。 社宅がとても安かったので、なんとか暮らせていました。

多くの病院は年功序列です。 技師長のように長く勤めた人の給料が高いので、平均が上がっているのかもしれません。 長く勤めた先がどうなるかは、最初に書いたとおり、私にはわかりません。

当直や夜勤があるか、1日に何人撮るかも、本当に病院によります。 まったく無いところもあります。

この仕事が合う人

ここまで読んで、「やめておこう」と思った人もいるかもしれません。 でも、私はこう思っています。

合うかどうかは、人より「病院との組み合わせ」で決まる仕事です。

技師は、看護師のように一人の患者さんと長く関わることは、あまりありません。 「患者さんの声に励まされる」という場面も、多くはないです。 それを寂しいと思う人もいれば、そのほうが落ち着いて仕事ができる人もいます。

そして、腕を磨きたいと思っても、磨けるかどうかは勤め先しだいです。 どんな装置があるか。先生がどんな検査をオーダーするか。 それで、毎日やることも、身につくことも決まります。

だから、やりたいことがはっきりしている人ほど、それがぴったり合う病院を選べるかが大事です。 まだ決まっていない人は、いろいろな検査を順に回れる大きな病院で、自分に合うものを探すという選び方もあると思います。 合う病院に入れれば、安定した仕事の中で、やりたいことを続けられます。

だから、調べるべきは「病院」

ここまで書いて、いちばん伝えたいのはこれです。

放射線技師という仕事は、勤め先の病院でほとんど決まります。

何を撮るか。治療に関われるか。認定資格が取れるか。給料はどう上がるか。 どれも、職業ではなく病院で決まります。

だから、目指すか迷っているなら、「放射線技師とは」より先に、 実際の病院で、技師がどんな1日を過ごしているかを見てください。 学校の見学や実習で、技師の人に直接聞くのがいちばん確かです。

病院の選び方と調べ方は、こちらに書きました。 → 放射線技師の就活と国試が重なってしんどい人へ

この記事を書いた人

田爪 大智

元・診療放射線技師(熊本で臨床経験)→ Webエンジニアに転身して独立。

第一種放射線取扱主任者。

1問を理解するのに2時間かかっていた経験から、腹落ちまでの時間を数分に縮める学習法を追求。

放射線技師の国試対策アプリを一人で開発中。

診療放射線技師向けの業界メディアも作っています → tazume-medflow.jp

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