合格ラインの120点、どこで作る?
「放射線技師 国試 難易度」で検索すると出てくる記事は、だいたい「合格基準は120点以上・比較的やさしい」で終わっています。その先の「では120点をどこで作るか」まで書いている記事は見当たりませんでした。
11科目は出題数も正答率もバラバラです。理工学・放射線科学は出題数が最多(36問)なのに、実測の正答率は最低(65.1%)。ここだけで失点期待値が他のどの科目よりも大きくなっています。
「苦手科目を平均点まで上げる」より、「出題数×落とし幅」が大きい科目から着手するほうが速いです。まず理工学・放射線科学、次に診療画像検査学とエックス線撮影機器学、の順で埋めていきます。
「合格基準は120点以上」——検索して出てくるのは、そこまで
放射線技師国試の難易度やボーダーを調べると、求人サイトや資格ポータルの記事がずらっと並びます。どれも書いてあることはだいたい同じです。
- 合格基準は総得点120点以上(200点満点の6割)
- 0点の科目が1科目以下であること
- 合格率は7〜8割台で、国家資格の中では比較的やさしい部類
事実として間違ってはいません。でも、これで終わっています。120点を「どの科目で」作るのか、という一番知りたいところが、どの記事にも書かれていません。
11科目まとめて6割取ればいいなら、話はシンプルです。でも実際は、科目ごとに出題数がまったく違いますし、受験生が実際にどこで点を落としているかも科目ごとに違います。ここを無視して「全科目まんべんなく」で進めると、点の伸びない勉強に時間を使うことになります。
この記事では、合格ラボに実際に蓄積されている出題数と正答率のデータを使って、120点をどこで作るのが速いかを数字で出します。
120点は「全科目6割」じゃない。配点は科目でこれだけ違う
まず出題数です。第78回・第77回・第76回の3回分を並べると、科目ごとの配点の偏りがはっきりします。
| 科目 | 第78回 | 第77回 | 第76回 |
|---|---|---|---|
| 理工学・放射線科学 | 36 | 36 | 45 |
| 基礎医学大要 | 30 | 30 | 30 |
| 診療画像検査学 | 20 | 20 | 26 |
| エックス線撮影機器学 | 20 | 17 | 12 |
| エックス線撮影技術学 | 20 | 20 | 18 |
| 放射線治療技術学 | 19 | 20 | 20 |
| 核医学診療技術学 | 19 | 20 | 20 |
| 放射線安全管理学 | 10 | 10 | 9 |
| 医療画像情報学 | 10 | 10 | 6 |
| 医療安全管理学 | 8 | 8 | 4 |
| 画像工学 | 6 | 9 | 10 |
第78回で見ると、理工学・放射線科学(36問)と基礎医学大要(30問)を合わせて66問。全198問のうち、この2科目だけで約3分の1を占めています。一方で画像工学は6問、医療安全管理学は8問。同じ「1科目」でも、持っている配点はまったく違います。
11科目を均等に勉強するのが非効率な理由の一つがこれです。科目の優先順位そのものの考え方は科目選択の優先順位の決め方で詳しく解説していますが、この記事ではさらに一歩進めて、実際の正答率まで掛け合わせた話をします。
実際の正答率を掛けると、「取れている点」と「穴」が見える
出題数がわかっても、それだけでは「どこで点を落としているか」はわかりません。そこで、合格ラボの利用者が実際にその科目の問題をどれくらい正解しているかを見ます。
| 科目 | 解答数 | 正答率 |
|---|---|---|
| 理工学・放射線科学 | 6,052 | 65.1% |
| 画像工学 | 496 | 67.5% |
| 診療画像検査学 | 1,012 | 68.1% |
| エックス線撮影機器学 | 803 | 68.1% |
| エックス線撮影技術学 | 1,062 | 71.2% |
| 放射線安全管理学 | 716 | 72.1% |
| 医療画像情報学 | 274 | 72.3% |
| 放射線治療技術学 | 805 | 73.3% |
| 核医学診療技術学 | 895 | 75.8% |
| 基礎医学大要 | 2,584 | 79.3% |
| 医療安全管理学 | 140 | 82.1% |
🔴 この正答率は、全受験生の統計ではありません。 あくまで合格ラボの利用者——つまり自分で問題を解きに来ている人たちの実測値です。母集団は偏っています。「全国平均がこの数字」と読まないでください。
とはいえ、実際に問題を解いている人たちの記録として見ると、傾向ははっきり出ています。出題数が最多の理工学・放射線科学が、正答率も最低です。逆に医療安全管理学は出題数が少なく、正答率は最高。この対比が、次のセクションの核心になります。
出題数×正答率で見える、失点期待値が最大の科目
出題数と正答率を掛け合わせると、「その科目でいま何点取れていて、あと何点落としているか」が見えます。第78回の出題数を使って計算しました。
| 科目 | 出題数 | 正答率 | 取れている点(目安) | 落としている点(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 理工学・放射線科学 | 36 | 65.1% | 約23.4点 | 約12.6点 |
| 診療画像検査学 | 20 | 68.1% | 約13.6点 | 約6.4点 |
| エックス線撮影機器学 | 20 | 68.1% | 約13.6点 | 約6.4点 |
| 基礎医学大要 | 30 | 79.3% | 約23.8点 | 約6.2点 |
| エックス線撮影技術学 | 20 | 71.2% | 約14.2点 | 約5.8点 |
| 放射線治療技術学 | 19 | 73.3% | 約13.9点 | 約5.1点 |
| 核医学診療技術学 | 19 | 75.8% | 約14.4点 | 約4.6点 |
| 放射線安全管理学 | 10 | 72.1% | 約7.2点 | 約2.8点 |
| 医療画像情報学 | 10 | 72.3% | 約7.2点 | 約2.8点 |
| 画像工学 | 6 | 67.5% | 約4.1点 | 約1.9点 |
| 医療安全管理学 | 8 | 82.1% | 約6.6点 | 約1.4点 |
「取れている点」を全科目で足すと約142点。合格ラインの120点は超えていますが、これは合格ラボの利用者という偏った母集団の数字なので、そのまま「余裕がある」と読むのは早計です。むしろ注目すべきは右側の列——科目ごとの「落としている点」の大きさです。
理工学・放射線科学だけで約12.6点。 2位の診療画像検査学・エックス線撮影機器学(各約6.4点)の約2倍です。出題数が最多で、なおかつ正答率が最低という「二重の不利」が、この科目に集中しています。
「苦手科目を平均まで上げる」より速い、優先順位のつけ方
ここまでの数字を、優先順位という形に落とし込みます。
よくある勉強計画は「苦手科目を平均点まで底上げする」という発想です。間違いではありませんが、すべての科目が同じ重みを持っているわけではないことを見落としています。医療安全管理学を82.1%から90%に上げる労力と、理工学・放射線科学を65.1%から75%に上げる労力を比べたとき、後者のほうが出題数が3倍以上ある分、点数への跳ね返りも大きいのです。
優先順位の付け方はシンプルです。
- 「出題数×落とし幅」が大きい科目から着手する(このデータでは理工学・放射線科学が突出)
- 次点の診療画像検査学・エックス線撮影機器学・基礎医学大要へ広げる
- 出題数が少ない科目(画像工学・医療安全管理学など)は、後回しにしても総得点への影響は限定的
これは「捨てる科目を作る」という意味ではありません。0点の科目が1科目でもあれば不合格という条件がある以上、全科目に一定の対策は必要です。あくまで「どこから手をつけるか」の順番の話です。
自分の直近の正答率がこの表とどれくらいズレているかは、第78回の合格発表データや過去13回分の合格率推移と合わせて見ると、難化・易化の年による変動も含めて把握しやすくなります。
理工学・放射線科学から始めるべきもう一つの理由
出題数と落とし幅の大きさだけでも理工学・放射線科学を最優先にする理由になりますが、実はもう一つ理由があります。
この科目は「光電効果」「コンプトン散乱」「電離箱」といった、他のほぼすべての専門科目の前提知識を含んでいます。撮影技術学の画質調整も、治療技術学の線量計算も、安全管理学の遮蔽計算も、理工学・放射線科学の理解が土台になっています。
つまり、理工学・放射線科学の正答率を上げる作業は、その科目単体の得点だけでなく、専門科目側の理解にも波及する可能性が高いということです。科目間のこの依存関係については科目選択の優先順位の決め方で「土台→専門→横断」の3層構造として整理していますし、理工学・放射線科学(放射線物理学)そのものの攻略の考え方は放射線物理学の勉強法にまとめています。
出題数が最多、正答率が最低、しかも他科目の土台。理工学・放射線科学を最初に埋めるべき根拠は、この3つが重なっているところにあります。
実際に第78回でどんな問われ方をしていたかは、第78回の問題一覧(登録なしで読めます)で番号順に見られます。数字だけでなく、実際の問題文を見るほうが「落とし幅」の中身がつかみやすいこともあります。
まとめ
- 合格基準の120点は、11科目均等の6割ではなく、科目ごとに配点も正答率も偏っている
- 理工学・放射線科学と基礎医学大要の2科目だけで、第78回の出題数の約3分の1(66問/198問)を占める
- 実測の正答率(合格ラボ利用者・全国平均ではない)を見ると、理工学・放射線科学が出題数最多かつ正答率最低
- 「出題数×落とし幅」の失点期待値で見ると、理工学・放射線科学だけで約12.6点。他のどの科目よりも大きい
- 苦手科目を平均点まで底上げするより、失点期待値が大きい科目から着手するほうが総得点への効果が速い
- 理工学・放射線科学は他の専門科目の土台でもあるため、埋めた分だけ波及効果も期待できる
この記事を書いた人
田爪 大智
元・診療放射線技師(熊本で臨床経験)→ Webエンジニアに転身して独立。
第一種放射線取扱主任者。
1問を理解するのに2時間かかっていた経験から、腹落ちまでの時間を数分に縮める学習法を追求。
放射線技師の国試対策アプリ「合格ラボ」を一人で開発中。
診療放射線技師向けの業界メディアも作っています → tazume-medflow.jp
合格ラボ利用者の声
「暗記しなきゃという呪縛から解放されました」— 既卒・再受験のAさん
「勉強の順番があってありがたかった」— 新卒Bさん
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ブログで読めること
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